むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • お腹が張って苦しい病気:SIBO

    食後にお腹がパンパンに張って苦しい、ガスが溜まってきつい、という患者さんが大勢います。胃腸科に行くと、胃カメラや大腸の検査などされると思いますが、たいていは何もなく、ガスコンやガスモチン(モサプリド)などの処方をもらうのですが、ほとんどの場合あまり改善しません。そんな患者さんは、当院のように漢方専門のクリニックを受診される場合があります。この、食後にお腹にガスが溜まってパンパンに張って苦しいという病気は、これまであまり病気としてとらえられていませんでしたが、最近では小腸での腸内細菌の過剰発酵が原因だとわかってきました。英語の病名の頭文字をとってSIBOと呼ばれます。

    SIBOに対して国内で承認された薬はなく、消化器の病院でもあまり積極的に治療しているところはないようです。当院でも、これまで漢方であれこれ試行錯誤していましたが、SIBOという病気の概念が明らかとなってから、独自に治療法を研究し、最近ではわりとシンプルな処方で改善するようになってきました。漢方だけでなく、西洋薬を併用しています。

    ただ、お腹のなかで細菌が過剰発酵するわけですから、食べ物からも発酵食品をできるだけ避けたほうがいいみたいです。納豆やヨーグルト、キムチ、ぬか漬けなど発酵食品は普通の人には健康にいいとされますが、SIBOの人は避けたほうがいいようです。また、食物繊維やオリゴ糖は腸内細菌の餌となり、発酵を促進するため避けたほうがいいみたいです。このように、SIBOには独自の治療薬の組み合わせと食事療法との両輪がきちんとあって初めて改善するのです。

  • 更年期の漢方治療

    女性で、急にカーと熱くなったり汗が出たりすれば、更年期かなと思うことでしょう。50歳前後ならだいたいそうだろうと思いますが、ずっと若くて、あるいは閉経後10年以上たってもこのような症状が見られることがあります。婦人科に行っても更年期ではないと言われておしまい、ということがしばしばあります。そういう患者さんが当院に多く見られます。更年期様の症状を呈した自律神経失調ととらえます。

    そういう場合の治療は、やはり漢方です。更年期の定番といえば加味逍遥散です。それだけでうまく行けば何も問題ないのですが、当院の漢方専門外来までたどり着く方は、通常の漢方では治らないような難しい症例が多く見られます。そのような場合、加味逍遥散に当帰芍薬散や四物湯、温清飲などを加味したり、女神散という更に効果の強い処方に変えることでうまくいくことが多いです。もし、加味逍遥散を飲んでいるけど今ひとつスッキリしないという場合はご相談ください。

    更年期で漢方薬局に相談すると、「命の母」という商品を勧められることが多いと思います。この処方はよくできていて、とても良く効きます。私も、「命の母」の構成生薬を参考にオリジナルでブレンドすることがあります。保険の制約で漢方製剤は2つまでしか処方できないため、複雑な「命の母」をツムラなどの医療用漢方2剤で再現するのは難しいため、患者さんごとに病態把握をし、治療方針の大枠(だいたいの方向性)を決めて2剤の組み合わせを考えていきます。

  • 月経過多の食事療法

    女性で貧血の原因のナンバーワンは月経過多です。生理の際に出血がおおくて、普通の食事で摂る量の鉄分では補いきれずに貧血になるものです。鉄分の多い野菜の代表はほうれん草や小松菜ですが、昔の露地栽培ものと違って最近の野菜はアクも少なく栄養が殆ど入っていません。ほうれん草で貧血治療できる量の鉄分を取ろうと思えば毎日4キロのほうれん草を食べないといけません。まあ無理でしょう。赤身の肉(牛や豚)にも鉄分が含まれますが、これも、それほどたくさんは食べられません。

    発想を変えれば、鉄の補給以外には、月経過多の治療をすれば貧血は治ります。そこで、婦人科に相談するわけですが、子宮筋腫などが見つかることがしばしばあります。しかし、見つかったから即手術というわけではなく、多くの場合、経過観察となります。まだ小さいからとか、年齢からあと数年で閉経するから、とかいろんな理由で手術が見送られます。そこで登場するのが桂枝茯苓丸という漢方です。産婦人科で子宮筋腫の治療によく使われる処方です。

    当院は漢方を専門としているため、そういう処方をもらっているけど改善しないという難症例が集まってきます。その場合、「きゅうききょうがい湯」という漢方を加えるのですが、その構成成分で大切なのはアキョウというニカワです。肉や魚を煮たりするとゼラチン状に汁が固まります。そのゼラチン(コラーゲン)が大切なのです。そこで、そのような患者さんには漢方だけではなく、市販のフィッシュコラーゲンとビタミンCを飲むようにお勧めします。最近たて続けにこのような患者さんがあり、皆さん驚くほど生理の出血が減ったと喜ばれています。コラーゲンは肌の調子が良くなるだけでなく生理の出血も軽くなるという、まさに女性の味方です!

  • 在宅医療のご案内

    夏本番のような暑い一日でしたね。昼休みは往診に出かけるのですが、これだけ暑いと車の中は相当過酷です。冬より夏のほうが大変です。私は、クリニックでの仕事は白衣を着ていますが、夏に往診する際はスクラブという手術着みたいなのを着ています。薄くて涼しいのと、洗濯が簡単だからです。もし白衣のまま真夏の炎天下に往診にでかけたら、午後の診察室は汗臭くてたまらないことでしょう。もう一つ、スクラブを着て往診に行くのには理由があります。それは、患者さんのお宅にお邪魔する際に白衣で押しかけると、近所の人からは、あそこには病人がいると言う目で見られるのではないかと思うのです。もしスクラブだと、訪問介護などの福祉系の人と区別がつかないので、あまり目立たず訪問できると思うのです。私なりのちょっとした気配りです。

    訪問診療は、体調が悪くて訪問するわけではなく、定期的に(だいたい月に2回程度)訪問して健康管理をするのが目的です。血圧の薬など定期薬を処方したり、風邪症状などあれば臨時薬を処方します。もしご家庭で容態が悪化した場合、訪問看護などのサービスを利用して、家で点滴などの治療を受けることもできるし、在宅酸素(酸素濃縮器をベッドサイドに設置して、酸素吸入すること)なども可能です。しかし、高度な治療を必要とする場合は在宅では限界があるため、入院先を手配して、入院治療となります。

    ご高齢で、高度医療は受けたくないが、痛みや苦しさだけとってくれさえすればあとは一日でも長く自分の家で過ごしたい、という希望の方もおられます。お年寄りの多くはそのような望みの方が多いのですが、必ずしも望みが叶うとは限りません。もし、家族(配偶者や子供やその配偶者、つまりお嫁さんなど)の十分な理解とサポートがあれば、在宅で最期までという希望も実現可能です。当院ではこのような在宅診療に積極的に取り組んでいます。対象はクリニック近辺の方あるいは提携している老人ホーム(高齢者住宅)などの施設に入居されている方です。まずは、ご相談ください。

  • 痛風と尿酸

    当院は痛風の患者さんが毎日のように来られます。突然足の親指の付け根や足首などが腫れて痛み、歩くのも困難になるものです。痛風疑いの際には採血をして炎症反応や尿酸の値を調べます。院内で検査するので、10−15分ほどで結果が出ます。ただ、痛みの発作が出ているときは尿酸の値がなぜか低いことがあり、必ずしも病態と尿酸値の間に高い関連性は認めません。ちょっと高いだけでも長年続けば尿酸が組織間に沈着するため、血液中の尿酸の値が必ずしも組織の尿酸の状態をあらわしていないという事です。

    尿酸が高い場合、尿酸の合成の問題、排泄の問題の2つに分けられます。合成の方は主にプリン体やアルコールを取りすぎることで、尿酸合成が促進してしまいます。一方、血液中に高くなった尿酸は尿から排泄するのですが、排泄遅延の方は日本人の約半数といわれており、遺伝的に尿酸排泄が遅いため、血液中に溜まりやすいと言われています。そこで、治療薬としては尿酸の合成を抑えるタイプの薬(ザイロリック、フェブリクなど)と尿酸排泄促進剤(ユリノームやユリスなど)の2種類に分類できます。どちらも尿酸を下げる効果がありますが、尿酸排泄促進剤のほうが効果が良いような気がします。当院では、しばらくどちらかで治療して尿酸値が下がりにくいと判断した場合、両剤を併用することもあります。

    痛みに関しては、整形では湿布や鎮痛剤(ロキソニンやカロナールなど)をもらうと思いますが、なかなか改善しません。そこで当院では、通常の鎮痛剤に加えて、ステロイドやコルヒチンなど強力な抗炎症剤を1週間ほど併用します。その結果、2−3日目にはだいたい歩けるところまで改善します。尿酸が高くて痛風になるのはたいてい男性です。まずは飲み過ぎに注意しましょう。