むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 「効率を追求しない」生き方もある

    僕たちは時間に追われて生きている。分刻みの仕事、締め切りのある仕事。だれもが似たようなものだろうと思う。昔はバスの運行などもかなり大雑把だったけど、最近は、バスに乗って道がたまたま混んでいないとスケジュールより早く次のバス停に着いてしまうので、そこのバス停で時間合わせに3分ほど停車、とかざらにある。みんな1分にうるさいのだ。

    小学校の頃から時間を守るようにしつけられているので、時間を無視した生活というのに離れていない。つい、効率よく動く習慣がついている。

    犬(ゴン)の散歩をしていると、信号を何度か渡るところがある。ところが、うちのゴンは信号よりも信号の手前の電柱の方に関心がある。今だと青で渡れるのにーと思っても、ゴンは電柱の匂いを嗅ぐのに忙しい。あー赤になった。と思う。しかしよく考えてみると、ゴンにとって、効率よく青信号で散歩道を進むことは散歩の目的ではない。ゴンにとっては時間は関係なくて、早く散歩道を回ろうなどとは全く考えていない。いつもの電柱が今日はどんな匂いがするかなーというのが一番の関心であり、散歩の楽しみだ。効率など関係ない。ゴンにとってはそれでいいのだ。

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    今日、外来には毎月便秘薬をもらいに来る患者さんがきた。1錠だと効かず、2錠だと効きすぎる、と毎回同じ話をしていく。僕が、仕事の効率を追求するなら、「とりあえず1日2錠で処方しておきますが、調整して使ってください」と言って2−3分で終了。ただ、実際は僕の外来では、その患者さんのとりとめもない話を最後まで聞く。昔は便秘ではなかったという話、便秘は歳のせいでしょうかという話、山登りをしたらトイレがなくて大変だった話、昔軍隊で体を鍛えたから体は丈夫で便秘以外に何も薬はいらない話、などなど10分以上話はつづく。先月も同じ話を聞いたが、初めて聞くようにリアクションする。患者さんは診察室を出たらもう何を話したか覚えていないかもしれない。それでも、今日僕の外来でちょっとハッピーな時間を過ごした気分だけは残ると信じている。内科外来は救急外来と違って効率を追求しないで一人ひとりに十分な時間をとりたい。これは簡単にはできないのだが、そうする努力はしている。いや、楽しみながらそうさせてもらっている。後ろで待っている患者さん、待たせてごめんなさい。あなたの話もじっくり聞きますよ。