むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 人生の最期をプロデュース

    私達訪問診療をしているドクターは人生の最期をプロデュースするのも大事な仕事だと思います。日頃は1日1日を快適に健やかに過ごせるように、訪問するたびに何かしてあげられることはないかと考えます。その一方で、高齢で次第に体力が落ちたり、病気が進行したりすると、治療して治らないような状態になります。そういう時は、治療の方向から緩和の方向へと大きく舵を切って行きます。

    例えば進行した癌が見つかった場合、80歳も過ぎていれば治療をしてもしなくても予後に大差はありません。むしろ手術や抗がん剤の方が命を縮めると思われます。しかしそれだけではありません。だんだん食事が入らなくなって痩せてきたり、貧血が進んで意識も朦朧としてくると、死の恐怖と痛みや苦しみから解放されます。次第に枯れるように静かに亡くなっていきます。それを、貧血があるから輸血するとか、食事が入らないからIVH(中心静脈栄養)をするとか、見かけ上の体力回復を図ると、意識がしっかりしてくるので、はたから見ると元気になってよかったよかった、となりますが、当の本人は病気の痛みや苦しみ、恐怖と戦わなくてはいけなくなります。

    戦前の様子を描いたのドラマなどを見ると、家でお年寄りが亡くなる時は子や孫に囲まれて荘厳な最期を迎えますが、今は点滴や酸素マスクにつながって大変な最期を迎えることが多いものです。昔のように点滴や酸素に繋がれずに家族に囲まれて静かに最期を迎えることのできる訪問診療は素晴らしいと思います。ただ、家族が最後の最後にやっぱり救急車を呼んで救急病院に行きます、と言われることがあるのが現状です。自分ならどのような最期にしたいかをよく考えて身内にもベストな選択をしてほしいと思います。

    当院駐車場にて。