むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 減塩の工夫

    私は循環器の専門医ですから、高血圧患者さんをたくさん見ます。食事指導としては、もちろん減塩が大切です。日本人の平均的な塩分摂取量は未だに10gくらいあります。昔は12gくらいあったそうです。地域格差としては、東北の方が塩分摂取が多い傾向にあります。昔、野菜の保存食として漬物を食べる文化があるためと思われます。

    日本食に対して欧米の食事は塩分が少なく、1日で6−8g程度が普通になります。そこで、アメリカの心臓協会などは1日6g以下を推奨しています。そんな塩分制限、和食を食べている限り不可能です。まずくて食べられません。味噌汁も、ラーメンも、カレーも無理です。デパートのレストランでメニューにカロリーと塩分量が書いてある店があります。うどんやそばは一食で塩分4.5gと書いてあります! 1日の許容量の3分の2以上です。

    循環器のドクターは学会のガイドラインに忠実な人が多いので、高血圧や心筋梗塞で入院してきた患者さんには入院食で高血圧食、心臓病食など塩分7gでオーダーします。7gでも和食では薄すぎて味がしません。そんな食事では食欲も出ませんから、かえって体力がおちてしまいます。みんなこっそりふりかけをかけたり梅干しを買ってきて味を足して食べています。しかし、梅干しは1個で塩分1gです。要注意です。

    病院食はなぜまずいのか?まずは、食費が安いので材料にコストがかけられない。そして塩分が極端に薄く、味付けがしてない。いい食材なら下手に味付けするより素材の味を楽しむということが可能ですが、まずい食材に味をつけなければおいしくなるはずありません。

    では、いかに塩分制限をしながらおいしく食べるか。

    それは、

    出汁(ダシ)です。かつお、昆布、椎茸などたっぷり入れることです。野菜くずもいい味が出るので、人参やジャガイモはよく洗ったら皮を捨てずに出汁をとります。出汁には昆布やトマト・白菜のグルタミン酸、魚介(かつお)・肉類・とんこつのイノシン酸、椎茸・キノコ類のグアニル酸。これらを組み合わせて深い味わいとなります。したがって、和食なら昆布と鰹節と椎茸で3つとも入ります。洋食なら肉、トマト(ケチャップ)、マッシュルームで3つとも入ります。これを意識して旨味を十分入れてやると、塩分を控えても美味しくいただけます。

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    そうです。肉がイノシン酸、トマトとチーズがグルタミン酸。美味しくなる組み合わせです。