むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 標治と本治

    台風発生のニュースが出たと思ったら、早速風が強くなってきました。まだ遠いはずなのに勢力が結構強いのでしょうか。少し頭痛がしてきました。気圧の変化で頭痛がするのは偏頭痛です。漢方では五苓散を使いますが、若い女性の場合、当帰芍薬散を使うことのほうが多いと思います。それは、単純に頭痛を治すだけでなく、頭痛体質の大もとから治したいからです。このように、症状を取るだけの処方を標治、大もとから治すのを本治という言い方をします。漢方独特の考え方ですが、西洋医学にも当てはめられます。例えば、花粉症の薬。抗アレルギー剤は体質改善的に働かないので、飲んでいる間だけ効果を発揮し、薬が切れたら症状が出てきます。血圧の薬もコレステロールの薬も同じです。飲んでいるときだけ効果があります。

    漢方では標治と本治を意識して使い分けます。なんとなく本治のほうがいいように感じますが、実際にはそうでもないことが多いです。例えば、頭痛で来院している患者さんに頭痛を取らずに体質改善ばかりしていたら、いつまでも治らないと言ってヤブ扱いされます。そこで、漢方でも標治(症状を取る)を優先し、本治(体質からきちんと治す)は後回しとなります。これが原則です。

    ただし、一つだけ、標治ではどうしようもない疾患があります。薬物乱用頭痛です。頭がいたいからと、イブやロキソニンなどを飲むととりあえず痛みは止まりますが、数時間後には薬も切れてまた痛くなる。それに耐えきれずまた鎮痛剤を飲む。この繰り返しです。これは、鎮痛剤をやめないと頭痛が止まらないという不思議な悪循環に陥っています。鎮痛剤を我慢するように言っても、無理な人が多いのが現状です。ところが、素晴らしいことに抑肝散という漢方を入れると、悪循環が切れて鎮痛剤を簡単にやめることが出来ます。鎮痛剤の使いすぎは標治、鎮痛剤を我慢することが本治です。そして、漢方で本治を手助けできるのです。