むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 糖尿病とインスリン

    糖尿病といえば、血糖を下げるインスリンというホルモンが足りなくなって血糖が上がる病気という認識だろうと思います。それは正しいのですが、逆にインスリンが過剰状態なのに血糖が上がってしまった患者さんもいます。これは、インスリン感受性の低下と言って、インスリンに対して体がきちんと反応しないためにインスリンがたくさんあるにもかかわらず血糖が上がる病態です。当然、インスリンが足りない人にはインスリンを増やす治療が必要だし、インスリン過剰の人にはインスリン感受性(インスリンに対する体の反応)を改善させる薬が適しているといえます。しかし、不思議なことに、多くの場合、そこのところをきちんと診断せずに、なんとなく治療薬を選んでいる場合が多いのです。

    当院では、初診の糖尿病患者さんの場合、できるだけきちんと血中インスリン量を測定してから治療方針を立てていますが、すでに他院で治療が始まっている場合はインスリン値は薬剤で修飾されているため本来の体の状態を表していないため、あまり測定しません。近年、糖尿病治療薬は飛躍的に進歩して新薬がいろいろ出てきました。中でも一番新しく目を引くのがSGLT2阻害剤です。

    SGLT2阻害剤は血糖を尿中に捨ててしまう薬剤で、食べたカロリーの数パーセントを糖の状態で排泄します。結果、血糖値が下がるのですが、メリットがいくつもあります。糖を尿中に捨てるときに尿量も増えるため、利尿作用があり、心不全治療薬としての働きがあります。また、血中のインスリンを上げずに糖を下げてくれるので、安全です。使ってみると、血糖の下がる効果は優れています。唯一注意が必要なのは、尿路感染です。薬の作用として尿糖が出ますから、そこに細菌感染しないようにしないといけません。

    大甲橋のふもとにて