むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 治療ガイドライン

    最近は、どの分野も治療ガイドラインを作るのが流行っています。学会が違うと異なる視点からガイドラインを作ってくるので、同じ疾患でも治療の方針が異なることはしばしばあります。

    そういう中、振り回されるのは、現場の医者と、当の患者さんたちです。テレビや雑誌で最新のガイドラインではこうなっている、みたいな話が話題になると、あたかもそれが最先端で正しい事実であるかのごとき印象ですが、実際にはそうとも限りません。私の専門である循環器の分野を例にとると、高血圧ガイドラインが推奨する血圧目標はガイドラインが改定されるたびに低く設定されてきました。そして、ガイドラインの作成者と製薬会社の癒着が大きな社会問題となったのはまだ記憶に新しいことと思います。

    そのように、製薬会社はガイドラインの目標値をわずかに低く設定してもらうだけで数百億円の利益を得るのです。そういう事件があってからは、私はガイドラインに対してはどれも参考にはするけれども、金科玉条ではないという姿勢で臨んでいます。したがって、テレビではこのくらいまで下げた方がいいと言っていたとか、気にされる患者さんもいますが、私は自分で納得した範囲でしか治療はしません。血圧も、コレステロールも、尿酸も、血糖もガイドラインでは下げるようにと書かれていますが、実際にはそう簡単ではありません。コレステロールや血糖がいくつ以上の数値なら治療を開始して、いくつ以下まで下げましょう、みたいなシンプルなものではないのです。その患者さんの年齢、性別、糖尿病や高血圧の既往歴、家族歴、タバコを吸うのか、心筋梗塞や脳梗塞にかかったことがあるのか、などなど諸条件から治療開始のタイミングと治療目標が変わってくるのです。

    丁寧にかかれたガイドラインにはそのあたりまで踏み込んで複雑なアルゴリズムが出来上がっていますが、すべてのガイドラインがそうとは限りません。また、治療の開始に関しては書かれていても、治療を終了させるタイミングについてかいてあるガイドラインは皆無です。やはり、ここにも製薬会社の絡みがあるような気がします。

    そういうわけで、昨日も書いたのですが、私の目標としては一剤でも少ない薬で患者さんを健康にする事を目標としています。大学など公的な病院では、ガイドラインに忠実ですから、薬がいくつ増えようとも治療目標に達するまで薬が増え続けます。それは、ポリシーの違いとしか言いようがありませんが、当院では減薬にできる限りチャレンジしたいと思っています。

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