むらかみ内科クリニック

院長ブログ

BLOG

  • 陰と血が不足する病態の話

    急に寒くなりました。体がついていかないで体調を壊す人も増えています。今日の外来ではこの数日で急に血圧が上がったという人が多数おられました。やはり気温が下がると血管が縮むので抵抗が大きくなり血圧が上がるのです。物理で言うオームの法則(E=IR)と同じ理屈です。また、冷えて来ると増えるのが乾燥肌でかゆくなるというもの。私も毎年冬になると体がカサカサになります。空気が乾燥するとか暖房の影響とかあるみたいです。お風呂で皮膚の油成分を洗いすぎないようにしないといけません。とはいえ、私はサウナ好きで週末はジムと温泉をセットにしているのでどうしても皮脂が抜けてしまうのかもしれません。お風呂上がりにニベアなどの油性の保湿剤を使うのも大事。それでも改善しないときは、漢方薬の出番です。皮膚の乾燥は漢方では「血虚証」といいます。血分が虚(不足)したという意味です。治療はもちろん補血剤です。漢方には皮膚を潤す処方がいろいろあります。

    ついでに乾燥の話を書きたいと思います。歳を取ると口が渇くとか目が乾くという症状が増えてきます。なかにはジェーグレン症候群と診断される場合もありますが、その診断基準は満たさないけど乾くという話はよく聞きます。こちらは漢方では「陰虚証」といいます。陰分(水分)の不足と言う意味です。治療はもちろん補陰剤です。陰を補うと入っても、体の乾燥は飲水や点滴では補えないのが不思議です。コロナなどで咳がいつまでも続くのは肺陰虚といって呼吸器の陰分の不足と考えます。従って、気道を潤す麦門冬湯などの漢方で咳を止めることができます。

    咳が出る話で面白かったことがあったので書いておこうと思いますが、熊本弁の話です。「調子はどうですか」と訪ねたら、「おかげさまで、咳はだいぶおろ出るようになりました」と言う返事。「おろでる」というのは私の記憶では植木山鹿方面の方言で「出ない」と言う意味。「おろ」がその後の言葉を否定するいみです。「おろよか」といえば「よくない」「おろいたか」といえば「いたくない」の意味です。熊本に長年住んでいても、「咳がおろでる」といわれて出るのか出ないのか理解できる人は今では少ないと思います。

    熊本駅前