むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 認知症の治療

    認知症の治療は難しいです。特に中核症状である物忘れ、記憶に関する治療は難航を極めます。多くの場合、家族が物忘れがひどくなってきたと言って連れてこられるのですが、これと言った治療法がないのが現状です。CTやMRIなどで脳の異常がないか調べたりすることもありますが、多くの場合加齢に伴う変化とか、アルツハイマー型認知症です。アルツハイマー型認知症には承認されている内服薬がありますが、殆どの場合飲んでも変化は見られません。たまに、改善した症例があるとみんなに効きそうな話になりますが、そう簡単ではありません。

    一方、認知症の周辺症状にはいろいろな方法があります。最近経験した症例では、老人ホームのお年寄りで普段はおとなしいのですが、突然スイッチが入ったように動き出して、施設を脱走しスタッフが探し出して連れて帰ろうにも暴力的ですごい抵抗される方がいました。このような場合、認知症の薬ではなく統合失調症などに使う安定剤を追加することで、非常に穏やかな日々を取り戻すことができました。一方、別の患者さんでは、認知症が進んでいて短期記憶が殆どない人がいます。その方に対して精神科からアルツハイマーの薬が出ていたので、当院に変わってからも引き続き処方していたのですが、最近活動性が低下して体が動かなくなってきました。そこで、アルツハイマーの薬を中止してみたところ、元気な姿に復活され、ピアノも弾けるようになった(若い頃はピアノの先生だった)のです。

    このように、アルツハイマーの薬を切ったら元気になった症例もあり、逆に安定剤を追加することで平和を取り戻した症例もあります。いずれも周辺症状に対する治療ですが、生活の質に大きく関わってくるので、治療できるところは上手に治療したいものです。そして、期待しても簡単ではない中核症状(記憶)に関しては、若い頃からビタミンやオメガ3などをしっかり取ること、糖尿や高血圧を放置しないこと、一日ボーと過ごさないで能動的に社会と関わることなどが大切です。

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