むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • コレステロールの管理

    検診を受けるとLDLコレステロールが120以上で再検査、あるいは要治療と言われます。実際はLDLの正常範囲は139までで140以上が高コレステロール血症なのですが、なぜか検診では20引いた値をボーダーラインに設定してあります。早めに注意をうながすためと思いますが、こんなふうに正常範囲を勝手にいじられると患者さんはよくわからずにすぐにでも薬を飲まないといけないのかと思ったりされます。そして、コレステロールの薬なんか一旦飲み始めたらずっと飲まないといけないから、病院に行きたくないと言ったりされるのをよく聞きます。

    実際には高コレステロール血症はその数値だけでやみくもに治療をするかどうかを決めるわけではありません。リスクファクター(危険因子)の組み合わせにより将来心血管障害(狭心症や心筋梗塞など)を起こす確率を考えて治療の必要性を考えます。最も大切なのは、一度でも心筋梗塞や脳梗塞などを起こしているなら、厳重にコレステロールを管理しないといけないということです。これは再発予防ですから2次予防と呼ばれます。一方、まだ心筋梗塞など起こしていないけどたまたま採血したらコレステロールが高かったという場合、今後起こるかもしれない心血管障害を予防する意味で一次予防と呼ばれます。

    1次予防に関しては、単なるLDLの値で決めず、高血圧や糖尿病の有無、喫煙の有無、HDL(善玉)コレステロールの値、男女差などの因子を加味して治療方針を決めます。血圧や糖尿があればそれだけ厳格なコントロールが求められます。実はそこに男女差という大きなファクターがあり、閉経前の女性は動脈硬化の進展が遅いのでLDLの目標値は少し高めで設定されています。しかし、閉経後は男女差が小さくなります。繰り返しますが、コレステロールの管理は単にその数値だけでは決まりません。専門的なエビデンス(科学的事実)に基づいた治療方針があるということをご紹介しました。

    稲刈りも終わり