むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 尿酸代謝の話

    飛び石連休の間の営業日なので患者さんも多く、忙しい一日でした。なかには薬が切れて血圧が上がってしまった患者さんもおられます。休みが続くときは早めの受診をおすすめします。今日も診療のあとWEB講演会に参加しました。テーマは尿酸の話です。演者は熊大の循環器内科で先輩だった吉村先生。現在、慈恵会医科大の教授をされています。熊本にいたときもものすごく優秀だったのですが、今日の話も素晴らしかったです。

    通常、尿酸はプリン体のとりすぎで上がると言われており、ビールなどはプリン体ゼロを謳い文句にしているものも多数あります。しかし今日の講演では尿酸の材料の一つはATPだとのこと。ATPというのは細胞内のエネルギーの塊です。ヒトは、食べたものや脂肪として蓄積したエネルギーを代謝によりATPに変換して細胞で利用します。ATPは万能通貨みたいなものです。このATPが心不全などの病態では代謝がうまく回らなくなり、尿酸に分解されるとのこと。なるほど、と思いました。ビールなど全然飲まない心不全のお年寄りで尿酸がとても高くて治療しているひとが何人もいます。その理由がわかりました。

    尿酸が高いと痛風になるので治療するのですが、痛風を起こしたことのない高尿酸血症をどこまで経過観察するかは議論の余地があります。今日の講演では尿酸値が9を超えるようなら無症状(痛風の既往がない場合)でも治療をしたほうがいいとのことでした。医学というのはこのように一つ一つ事実を積み上げながら治療の基準が決まっていきます。検診で高いと指摘された数値をやみくもに治療すればいいというわけではありません。