むらかみ内科クリニック

院長ブログ

BLOG

  • 漢方には証がある

    漢方を処方する際には、診察して患者さんの証をみます。証というのは表裏寒熱虚実と言ったファクターを分析して、患者さんの病態を把握することです。通常風邪は表証、胃腸炎は裏証です。寒気があれば寒証、熱感があれば熱証です。このように分類するといくつかのパタンに分けることが出来ます。漢方はこのように極めてデジタル的に診断します。冬にかかる風邪(たとえばインフルエンザ)の場合、鳥肌が立って寒気がします。厚着をしたり、温かい飲み物を好みます。当然、これは寒証で、治療に使う漢方も温めるものを使います。代表的な処方は、葛根湯や麻黄湯、麻黄附子細辛湯などです。

    夏風邪はほとんど寒気がなく、汗がダラダラと出たりします。冬の風邪とは全く違う病態です。この場合、熱証ですから体を冷やして治す方法を取ります。自己判断で、風邪引いたから葛根湯、とか麻黄附子細辛湯、みたいな感じで夏に冬の温める風邪薬を飲んでしまうと、体が更に熱くなって汗もどんどん出て体力を消耗します。もちろん治りません。たまに、クーラーを強くかけたまま寝てしまって体が冷え切って朝のどが痛くてぞくぞくする、というときは葛根湯を使う場合もあります。しかし、そういう症例はまれです。

    このように、漢方薬は、病名に対しての薬というわけではなく、病態によって使い分けるため、季節により処方が変わります。面白いところでもあり、難しいところでもあります。