むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 慢性腎臓病(CKD)

    慢性腎臓病をCKDと呼びます。最近は、透析患者さんの医療費問題でいかに透析になる数を減らすかが問題となっています。それは、医学的というより、財政的な問題でもあり、医療サイドはもとより県や市など行政の方から積極的に動いています。ちょっとでも腎機能が悪いとかなり脅されます。熊本でも、CKDネットワークと言って腎機能が低下してきた患者さんはかかりつけから腎臓専門医へ送る仕組みが構築されています。しかし、専門へ送られても、できることは限れています。腎臓を治す治療法はないからです。結果、血圧を下げましょうとか、コレステロールを下げましょうとか、糖尿病をちゃんと治療しましょうという話で終わりです。

    腎機能の指標としてeGFRという数値があります。お手元の採血データを見ると書いてあると思います。60以上あればいいのですが、30を切るとよくありません。ところが検診では50を切ったくらいでも脅されます。このeGFRはクレアチニンというデータと年齢、性別をもとに計算されます。したがって、クレアチニンの値が変わらなくても1つ歳を取ればその分eGFRが下がるような計算です。腎機能を正確に表してはおらず大体のところを簡単な計算で類推しただけです。当然、高齢者はクレアチニンが悪くなくても年齢を数式に入れればeGFRは悪くみえます。

    クレアチニンは腎臓が悪いと上がるのですが、筋肉量に比例します。やせ衰えた人は筋肉量が少ないためクレアチニンが低く、腎機能と関係なくeGFRがいい値になります。ということは、見せかけのeGFRを改善するためにはタンパク質を取らずに筋肉量を落とせばいいのですが、それでは本末転倒です。年をとったらただでさえ足腰弱ります。しっかり蛋白をとって筋肉を落とさないようにしましょう。当院に80歳位の通院患者さんで、腎機能が悪いと言われて腎臓病食(蛋白制限食)をとっていると言われました。クレアチニン値で1.2くらいです。eGFRにすると33くらいで悪く見えますが、全く心配ありません。ちゃんとタンパク質を摂るように指導しました。間違った栄養指導はメリットないどころか害があります。