むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 漢方の使い方と気候の影響

    連休最後の日は休日当番医で、80名近い患者さんでした。ほとんど風邪ですが、インフルエンザが1名でした。あとは胃腸炎も結構見られました。風邪の種類としては、すでに夏風邪のウイルスが主な様でした。漢方では、冬の風邪では体を温めて寒気を取ります。葛根湯や麻黄湯がその代表です。一方、夏の風邪は寒気は少なく、喉の痛みや発汗が目立ちます。私は、小柴胡湯加桔梗石膏をよく使いますが、少し寒気が残っている人にはそれに葛根湯を合わせて使います。柴葛解肌湯という処方です。市販の漢方薬(処方箋のいらないもの)では藿香正気散も夏によく使う処方です。

    以前私がテキサスに留学した際に、漢方の先輩である吉冨先生から、テキサスはアメリカの南部(メキシコとの国境の州)なので温かい。九州も温かいけど、もっと暖かいところで使うべき漢方はおそらく熊本で使っていた処方とは違うと思うと言われました。確かにそのとおりでした。テキサスに葛根湯などを持っていきましたが、アメリカにいた5年間で葛根湯を飲むようなことはありませんでした。

    日本でも、九州で漢方の大家と言われた先生が東北に転勤してみると、いつも九州で使っていた処方が効かない、なにか工夫が必要だと言われます。このように、漢方は診察して証(見立て)を決めて処方するという一連の流れだけではなく、地方性(気候、気温、湿度)などを含めた経験が十分ないとうまくいきません。そういう点も、西洋医学とはぜんぜん違う世界なのです。