むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 在宅での最期

    在宅医療をしていると、亡くなる方もおられます。今日は朝から患者さんの入居している老人ホームから調子が悪いと報告がありました。点滴や酸素など施設内でできることはすべて手配してあったので、あとは訪問看護師さんに痰を吸引したり酸素の具合を調整してもらったりをお願いするだけです。折しもクリニックの方は正月明けの定期処方やインフルエンザなどの患者さんでごった返しており、今日一日で100名近くの診察をしました。容態を見に往診したくても行く時間が取れません。

    夕方になり、診察が全て終わって慌てて施設に駆けつけましたが、残念ながら最期に間に合いませんでした。でも、患者さんも私の診察が終わるまでギリギリ待ってくれたような気がします。これが数時間早かったら、外来患者さんもたくさんいて診察を中断することもできず、どうしようもないところでした。この患者さんは病院ではなく在宅で最後を迎えたいというたっての願いから病院主治医も退院を許可し、私たちクリニックスタッフと訪問看護ステーションと、入居していた施設スタッフとのチームワークで看取りを引き受けました。

    こういう在宅での最期は病院と違って家族に見守られながら静かで厳かなものです。病院では心電図や血圧計などのモニターがいくつもついて、心臓が止まりそうになるとアラームがバンバンなり、看護師さんたちがドタバタと走りまわりますが、在宅ではそれがありません。蘇生術を施したりもしませんから苦しまずにきれいな最後を迎えられます。このように最期がうまくいくかどうかの大事な鍵は、唯一「本人と家族の覚悟」だけです。