むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 統合医療

    統合医療という分野がある。名前の通り、いろんなジャンルの医学を統合したものだ。西洋医学で足りない部分を補う。漢方、ハリ、整体、ヨガ、アロマ、リラクゼーション、その他いろいろな健康関連の専門家が集まった学会だ。土曜日には熊本で統合医療学会が開催された。僕はこの学会の世話人で、学会では特別公演の座長を頼まれた。

    その学会で聞いた面白い話をひとつ披露したい。

    ご存知の通り、北海道の夕張市は財政破綻して厳しい環境にある。夕張の医療体制も崩壊したと言っても過言ではない。住民は超高齢化しており、普通だったらみんな病院通いが仕事のような人たちばかりだけど、病院そのものがほとんど消滅してしまい、よほどのことがないと病院に行くことはない。救急車を呼んでもなかなか来ないし、救急患者は60キロくらい離れた札幌まで搬送されるらしい。そんな中、夕張市民の健康状態を調査した結果が発表された。なんと、驚いたことにガンや肺炎で亡くなる患者さんの数は人口当たり、日本全体の統計とほとんど変わっていないとのこと。つまり、医療体制が崩壊しても、夕張市民の寿命は短くなっていないそうだ。驚きとともに、感動すら覚えた。(詳しくは森田洋之先生の著書:破綻からの軌跡〜いま夕張市民から学ぶこと〜を見てください)

    日本の(医療)財政は近い将来必ず破綻する。夕張で起こったことが、日本全体で起こる。その時、日本はどうなるんだろうと思っていたが、心配ないようだ。では、夕張ではなぜなんとかなったのだろうか?

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    それは、お年寄りを地域全体で支え合う。認知症が進んだ高齢者で、普通なら入院して寝たきりになるような人でも、地域のみんながそれを見て、声をかけ、助け合うことで一人暮らしが可能。点滴をしないで口から食べることで、認知症も改善し、歩けるようになる。そして、年取って病気になった時に入院、検査、点滴、ベッド上安静という本人は望んでいない治療を甘んじて受けることなく、自宅に帰る。そこには在宅診療、訪問看護という病院を使わず生活の中での医療サービスを受ける仕組みを充実させる。また、肺炎球菌ワクチンなど予防できる病気の予防はきっちり行う。

    厚労省は日本全体の病床数を削減し、在宅医療に舵を切るよう仕向けている。これは、無駄にお金をかけない医療体制作りというだけでなく、最後まで住み慣れた地域や自宅で幸せに過ごす時間を大切にする、という意味で、決して悪いことではない。ただ、これまで病院任せにしていたところを他人任せにしないという覚悟が必要となる。