むらかみ内科クリニック

院長ブログ

BLOG

  • 薬物依存治療は難しい

    「精神科臨床144のQ&A(星和書店)」という本が刊行されました。月に一度金曜午後に外来を担当してもらっている真紀先生(東京の国立精神神経医療センター勤務&私の妻)もこの本の1セクションを分担執筆しています。内容は、「Q: ベンゾジアゼピン系薬剤の依存になってしまっている患者さんに対してどのように対処すればいいのでしょうか」というコーナーです。ベンゾジアゼピン系薬剤(以下ベンゾと略)はいわゆる睡眠薬や安定剤として広く使われている薬剤です。とてもよく効くのですが依存になりやすく、薬が切れるとどうしてもその薬が欲しくなるので麻薬みたいな感じです。

    以前は抗不安薬(安定剤)は睡眠薬より軽い薬だから安全という誤った認識があり、広く使われていました。デパス(エチゾラム)、ソラナックス(アルプラゾラム)などが代表です。今はこういった薬剤を睡眠薬代わりに出すことはしません。すでに薬物依存になってしまっている場合、並大抵ではやめられませんから、しかたなく処方していますが、処方するたびに残念で仕方ありません。最初にデパスやソラナックスを使わなかったら今頃こんなに依存症にならなかっただろうにと思うからです。

    実は、マイスリー(ゾルピデム)は非ベンゾと言われていますが、ほとんどベンゾと同じです。使っているうちにその薬がないと眠れなくなります。ひどいときは何ヶ所も病院を回って同じ薬を処方してもらい、一日5錠とか10錠とか使う人がいます。こういう人は4週間分処方しているのに3週目に貰いに来たり、薬をなくしたとか、家族が間違って捨てたとか、親の介護でしばらく県外に行くので早めだけど1ヶ月分ほしいとか、何かにつけ変な理由を考えて貰いに来ます。こうなったら自力ではどうにもなりません。医師会では、このようなベンゾ依存で点々と睡眠薬などをもらい歩く人をブラックリストにして情報共有しています。特にデパスは麻薬と同じような向精神薬に指定されましたから、年が明けると処方が厳しくなります。どこでももらえなくなると予想されます。しかし、突然内服を止めたら痙攣を起こしたりして命の危険さえあります。止めたいけど止められなくなって、どうしようもないところまで行ってしまった方は、真紀先生にご相談ください(完全予約制)。本気で依存を治したいならこちらも力になります。