むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 高齢者の多剤併用をいかに止めるか

    高齢者の多剤併用は社会問題となっています。年を取ればどうしてもいろんな病気が出てきます。高血圧、糖尿病、コレステロール、不眠症などの内科疾患に加えて、腰や膝が痛い、骨粗鬆症などの整形疾患、白内障などの眼科疾患などなどきりがありません。それぞれの疾患に対しては治療ガイドラインというものがあります。例えば高血圧治療ガイドライン。血圧をどこまで下げなさいと書いてあります。1剤で目標に達成できない場合、2剤3剤と重ねることでガイドラインに書いてある治療目標をなんとか遵守しようとします。

    全ての疾患に対してこんな状況ですから、気がつけば10種類以上の薬が処方されていると言うことはザラです。しかし、処方している医者にとってはガイドラインという治療指針に忠実に従っているだけで、なんら悪気はありません。しかし、高齢者にこのガイドラインをそのまま当てはめていいかどうかは甚だ疑問です。血圧も血糖も10年20年先の合併症を予防するために治療しているということを考えると、90過ぎのお年寄りに厳密な治療をすべきか考えないといけません。

    そこで私は、訪問先の老人ホームでは、必要最小限の血圧や糖尿の治療剤と便秘薬程度の処方に絞って内服薬を2ー3剤にするよう努力しているのですが、たまたまそういう人が訳あって病院に入院すると退院時にはまた10以上の薬が入っています。入院を受け持つ医師と私とで考え方の基本が異なる訳ですが、高齢者医療というものをもう少し真剣に考えないといけません。(ただ、減薬は国の財布に優しいですが、製薬会社は嬉しくないので、そういう勉強会はほとんど開催されません)