むらかみ内科クリニック

院長ブログ

BLOG

  • 痛くない死に方

    昨日に引き続き長尾和宏先生の新しい本の紹介です。今日紹介するのは「痛くない死に方」です。死に方の本なんて縁起でもないと思う方もいるかもしれませんが、長尾先生は尊厳死協会の副理事をされていて、その分野に関してはエキスパートです。

    私の25年の臨床経験でも、大学病院など大きな病院の集中治療部などでとことん頑張って治療した挙句の最期というのはかなり壮絶なものでした。たくさんの点滴チューブ、輸液ポンプ、心電図モニター、人工呼吸器などに囲まれ、ひっきりなしに血圧を測り、体温を測り、点滴を刺されたりで、実験動物のような最期です。昇圧剤で血圧を上げて、酸素をどんどん送りこむと一時的に意識が出ますから、家族は喜びますが、本人は意識が出てくると痛みや苦しみを感じますから辛い思いをします。

    一方、在宅医療では極力点滴や酸素などを使わず、食べなくなったらそこまでですから、体は次第に脱水となり、血圧が下がり意識が薄れ、痛みや苦しみを感じない世界に入っていきます。集中治療部の最後とはまるで違う最期を迎えます。その、痛くない最期を迎えるには一つだけポイントがあります。自分だけでなく、家族にも十分そういった尊厳ある最期を迎えたいということを理解してもらうことです。

    在宅医療だけでなく、最近はこのような尊厳死を理解する主治医のいる病院だと、うまく最期を見てくれることがありますので、いい主治医との出会いが大切です。

    まだ元気なうちに一読しておいたほうがいい、そんな本です。