むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 美しい最期

    縁あって、往診を頼まれていた患者さんの最期を看取ることになりました。100歳を超えており、ご家族も理解があり最期は何もせず静かに見守りたいというご希望でした。3ヶ月くらい前には食事も入っていたのですが、次第に水分とゼリーくらいしか食べられなくなり、その後全く何も受け付けなくなりました。

    通常、病院ならここで脱水の治療として点滴をしたり、高カロリーの輸液をしたり、あるいは鼻から胃に管を入れて栄養を流したり、いわゆるスパゲッティー状態になります。しかし、今回は往診で点滴などもせずに最期を看取ることになりました。全く何も食べず、点滴もしないと次第に意識は薄れ、苦しい様子はありません。本当に仙人のように静かに呼吸をしています。それも3日ほど経ち、血圧が次第に下がってきました。もし病院だと、心電図モニターがアラームを鳴らしたり、血圧を頻繁に測ったり、酸素を鼻から流したりします。最悪の場合、心臓マッサージ、電気ショックというフルコースの蘇生術を受けてしまうこともあります。しかし今回は静かです。心電図のピッピッピッという電子音はありません。

    そして夜の12時近くに静かに息を引き取られました。私も、そろそろという情報の元自宅に待機していましたので、10分ほどで駆けつけました。なんとも荘厳で美しい最期でした。全く苦しみのない最期というのはこういうものなのかと知りました。病院ではほとんど見ることのない状況です。これから日本は高齢化がさらに進み、多死社会になると言われています。せめて、苦しまずに綺麗な最期を迎えてもらうのも私たち訪問診療にたずさわるものたちの使命だと思いました。