むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • たこつぼ心筋症

    昨日、どういうわけか新聞社から「たこつぼ心筋症について記事を書きたいので取材したい」と連絡がありました。私はたこつぼ心筋症の専門家でもありませんし、新聞社に語るほどの知識もないと思ったので、その場はお断りさせていただきました。

    実は「たこつぼ心筋症」というのは少し変わった名前ですが、正式な学術名です。海外でもローマ字で「Takotsubo」と書けば通じるほど有名な疾患です。

    急性心筋梗塞と紛らわしく、急に心不全を起こして来院されることがあるため、循環器の救急病院では時々見かけます。私も大学病院や国立病院に勤務していた頃は、心筋梗塞だと思って心臓カテーテル検査を行ったところ、実際にはたこつぼ心筋症だったという症例を何度も経験しました。

    私が循環器内科を標榜してクリニックを開業してから10年になりますが、これまでに経験したたこつぼ心筋症は2~3例ほどだったと思います。

    そんな中、台風の影響で患者さんもまばらだった今日、お一人の女性が「少し動くだけで息切れがして、とてもしんどい」と言って来院されました。見た感じからしてただ事ではない重篤感があったため、大急ぎで心電図とレントゲン検査を行いました。

    心電図では急性心筋梗塞を疑うような所見が見られ、「これは救急病院へ紹介すべきか」と考えました。しかし、全体的な印象としては、どこか心筋梗塞らしくない雰囲気も感じられました。

    そこで心エコーで心臓の動きを確認したところ、まさにたこつぼ心筋症でした。

    昨日、新聞社とそんなやり取りをしたばかりだったのに、翌日にまさにその患者さんが来院されるとは、「引き寄せられた」としか言いようがありません。数年に1例しか経験しないような患者さんが翌日に現れるとは、本当に驚きです。

    たこつぼ心筋症は、強いストレスをきっかけに発症することが多い疾患です。ストレスに伴ってカテコラミンというホルモンが大量に分泌され、その影響で心筋がダメージを受けるため、「カテコラミン心筋症」と呼ばれることもあります。

    心筋梗塞のように冠動脈が閉塞する病気ではありません。そのため、心保護を目的としてβ遮断薬(ベータブロッカー)などを使用しながら全身状態を慎重に観察し、安静を保つことで次第に回復することが多い疾患です。

    心筋梗塞ほど一刻を争う病態ではないことも多いのですが、中には急性心不全が悪化する場合もあるため、決して楽観はできません。

    今日来院された患者さんは、どうしても入院できない家庭の事情があるとのことでした。そのため、一旦内服薬を処方して帰宅していただき、十分な安静をお願いしました。

    無事に回復されることを祈っています。

    台風が九州をかすめて通り過ぎ、西の空が明るくなってきた今日の夕方、私の車から虹が立ちました!