先日、NHKの「基礎英語」をラジオで聞いていたところ、スキットの中に「後で電話して」とか「帰りに郵便を投函してくれる?」といった表現が出てきました。英語の練習としては悪くないのですが、「いったい何時代の話だろう?」と思ってしまいました。30年くらい前の感覚ではないでしょうか。今では、全部メールでしょう。
私が大学生だった頃、まだ世の中に携帯電話やインターネットが普及する前に、「ニフティーサーブ」という会社のサービスを使ってメールをしていた時代がありました。自宅の電話回線にパソコン(モデム)をつなぎ、「ピーヒャララ…」と独特の音を立てながらネットに接続していたのを覚えています。当時は郵便のことを「スネイル(カタツムリ)メール」と呼んだりして、電子メール(e-mail)と対比されていました。メールを送ったあとに「いま送ったよ」と電話で伝えるような、そんな時代です。
大学を卒業する頃には、常時接続のインターネットが登場し、それ以降の通信手段の変化は、まさにリアルタイムで体験してきました。
いま、皆さんはどんな手段で「メール」やメッセージをやりとりしていますか?
多くの人がLINEを使っていると思いますが、それ以外にも、GmailなどのいわゆるPCメール、携帯キャリアのメール、iPhoneのメッセージアプリ、Facebookのメッセンジャーなど、実に多くの選択肢があります。相手によって使う手段を使い分けなければならず、なかなか面倒です。
そんな中、私はLINEがあまり好きではありません。初対面の方から「LINE教えてもらっていいですか?」と聞かれることもありますが、「教えてもいいですけど、あまり連絡取れないかもしれません」とお伝えしています。
というのも、LINEには他の連絡手段と決定的に異なる「困った点」があるからです。
それは、「スマホ1台でしか使えない」という点です。
私はiPhoneとiPadを合わせて5台ほど使い、パソコンも含めれば10台近い端末を持っています。日によって、その時その時で手元にある端末は異なります。LINEが入っているスマホが手元にある確率は、かなり低いのです。Gmailやメッセンジャーなど、他の手段であれば、どの端末からでもアクセスできるので困りませんが、LINEだけは例外です。LINEしか連絡手段のない方とは、そのスマホを持ち合わせていないときには完全に音信不通になります。
なぜこんなに不便な仕組みなのか、本当に理解に苦しみます。
話は変わりますが、新聞を読んでいると「電子処方箋の普及が進まない」といった話題が出てきます。確かに、医療業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)は非常に遅れています。処方箋が電子化されたとしても、実際に調剤するときには間違いを防ぐために一旦プリントアウトするでしょう。
それ以前に、もっと基本的なところに問題があります。それはFAXです。たとえば、調剤薬局から届く服薬管理の報告書は、なんとFAXで何十枚も送られてきます。他の病院への紹介状も、いまだに切手を貼って郵送しており、急ぎのときはFAXです。医師会からのお知らせやアンケートもFAXで届き、返信もFAXで送ります。Googleフォームなど、もっと簡便で正確な手段があるのに、なぜ使わないのか不思議です。
医療に限らず、さまざまな分野で日本のDXはまだまだ遅れています。
たとえばテレビでよく見かけるジャパネットの通販番組でも「今すぐお電話を!」と呼びかけています。でも、ネット注文のほうが人件費もかからず、支払いもスムーズに済むはずです。むしろ、ネット注文のほうをもっと安くしてもいいのでは?とさえ思ってしまいます。